東京都品川区西五反田2丁目
JR・東急・都営地下鉄 五反田駅 徒歩2分
精巣(睾丸)の精子を作る能力が低下しているため、精液中に精子が存在しない(=無精子症)状態を非閉塞性無精子症といいます。この非閉塞性無精子症の方の精巣から精子を採取する手術を、顕微鏡下精巣精子採取術(micro-TESE)といいます。
何らかの原因で精子を作る能力が低下してくると、精液中の精子が減少していきます。さらに悪化してくると、やがて精液中に精子が存在しない状態(=無精子症)となってしまいます。しかしながら、精巣ではある程度の量の精子が作られないと精液中に精子が出現してこない仕組みなので、無精子症だからといっても、精巣で全く精子を作っていないとは限りません。精巣全体が一様にダメージを受けているとは限らず、内部で細々と精子を作っている一部分が残っていることがよくあります。
この精子を作っている極小部分を見つけ出し、そこから精巣精子を採取してくる技術、これが顕微鏡下精巣精子採取術(micro-TESE)です。手術用の顕微鏡を使用すると、20‐30倍の拡大視野が得られますので、精子を作る能力が残っていそうな部分と、ダメになってしまっている部分を見分けることができます。精子を作る能力が残っていそうな部分を集中的に採取して、その中から精子を見つけ出すことができれば、それを顕微授精に用いることで赤ちゃんを授かることが可能になります。
精子は凍結して保存することができます。手術で採取された精巣精子は、その日のうちに凍結保存処理を行い、奥様が体外受精を受けられる予定のクリニックに輸送します。液体窒素で精子を凍結したまま輸送するための専用容器(ドライシッパー)を準備しています。奥様のクリニックには特段の制限はなく、全国のあらゆる体外受精クリニックまでお届けすることができます。
生殖医療専門医の市岡、菅藤と、手術専門の胚培養士、看護師の三人体制で手術を行います。ほぼ毎週手術を行っていますので、かなり熟練したメンバーで手術を行っているといえます。
局所麻酔の注射をしたのち、陰のうに約1cmの切開を入れます。そこから精巣(睾丸)を体表近くに引きだしてきて、手術用の顕微鏡をセッティングします。顕微鏡では20‐30倍の拡大視野になりますので、精子を作る能力が残っていそうな部分と、ダメになってしまっている部分を区別することができます。精子が存在しそうな部分を組織ごとに少量切除し、胚培養士に渡します。
胚培養士は受け取った組織をその場で処理し、別の顕微鏡にて詳細に精子を探します。ごく少数の精子しかいない場合が多いので、この過程には特有の高度な技術が必要となります。当院の胚培養師は経験豊富な熟練者ばかりですので、かなり念入りに精子を探索しています。
十分量の精子が採取できれば、その時点で手術を終了します。片方の精巣で精子が見つからない場合には反対側の精巣も検索します。どうしても見つからない場合で、2時間ぐらいかかることがあります。患者さんの病態にもよりますが、精子の採取率は45%程度と考えてください。
縫合は体内で溶ける糸を使用し、結び目が傷口の中に入り込むようにしますので、抜糸は必要ありません。
2019年4月18日に第107回日本泌尿器科学会総会(名古屋)にて「顕微鏡下精巣精子採取術における表面積の最大化法―3Dシミュレーションによる解析と非閉塞性無精子症患者に対する適用―」という研究発表を行いました。
これは、顕微鏡下精巣精子採取術において、精子採取率を最大化するための方法を数学的にシミュレーションし、最もよい方法を導き出すというもので、画期的な発表となりました。
当院ではこの手法を2014年より導入しており、以来精子採取率46%という非常に良好な成績を出しています。
この我々の手法と成績は、その後英語論文でも発表し、国内外から高く評価を受けています。
論文に興味のある方はこちらをご覧ください。
念のため、翌日に大事な用事のない日を選ばれることをお勧めしています。
1週間はスポーツをお控えください。入浴は、翌日から1週間はシャワーにしていただきます。
1週間後に受診していただき、傷口が完全に治っていることを確認した後に、お風呂に浸かっていただけます。