精索静脈瘤は最も患者さんが多く、我々にとっても最も多くの治療を手掛けている疾患です。しかしながら、しっかりとした診断と治療は意外に難しく、患者さんにとっては見落とされがちな病気と言えます。
心臓側から精巣に向かう血管(動脈)と、精巣から心臓側に戻る血管(静脈)がありますが、戻る血管(静脈)の血流が悪く、精巣の周辺に血液がたまる状態、これを精索静脈瘤と言います。
大きなものから小さなものまで、さまざまな程度がありますが、全体としては一般男性の約15%に認められます。また、男性側の不妊症の原因の30%以上がこの精索静脈瘤に由来します。
この精索静脈瘤ですが、年月とともに徐々に精巣への悪影響が進行すると考えられており、いわゆる「二人目不妊」の主な原因となっています。かつて我々の間では「二人目不妊を見たら精索静脈瘤を疑え」と言われていましたが、若いうちに一人目が自然に授かったとしても、二人目を作るまでの間に精索静脈瘤による悪影響が進行し、二人目不妊になることがよくあります。昨今は晩婚化の影響もあり、一人目不妊の患者さんの原因も、多くが精索静脈瘤となりました。